「恋愛」という言葉、あなたは気軽に使えますか────?
お久しぶりです。諸葛やかです。
最近「恋愛感情」や「恋愛」という言葉についてあれこれ語り合う機会が何度かあったので、その時に感じたこと・お話ししたことなどをまとめてみようと思います。
そして、本記事の最後で「恋愛ビュッフェ」という考え方を提唱します。
「性の多様性」という言葉と裏腹な結婚圧力
昨今、渋谷区の性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)に関する条例が成立したことや、米国で同性間の婚姻を禁止する州法が違憲であるとの判決が出たことなどから、世間でも「同性婚」に対する関心が高まってきています。
その一方で、「同性婚」が制度化されることに対し懸念を覚え、同性婚反対を表明する人たちが、セクシュアリティ(性のあり方)にかかわらずいらっしゃいます。私の身近にも何人かいらっしゃいます(以前の記事でも紹介しました)し、以下のような特集記事も最近書かれました。
- 牧村朝子|第104回 いまだからこそ、同性婚反対の同性愛者70人に聞きました (上)反対理由編|LGBTのためのコミュニティサイト「2CHOPO」
- 牧村朝子|第105回 いまだからこそ、同性婚反対の同性愛者70人に聞きました(下)反対するようになった理由編|LGBTのためのコミュニティサイト「2CHOPO」
上記リンク記事の中で、特に諸葛が取り上げたいと思ったのは以下の部分です。
▼「恋愛しろ、結婚しろ」みたいな空気でもっと息苦しくなるだけ
ツイッターで「結婚できない人をゼロに」というネタ画像が回ってきた。友達がほしくてビアン系イベントに行っても、すぐ世話焼きオバサンみたいな人が寄ってきて、えーっ彼女いないの? あの子とかどう? 勇気がないなら一緒に行ってあげようか? みたいなことを上から目線で言ってくる。こういう「恋愛しろ! 結婚しろ!」みたいな空気が、同性婚がOKになることによってビアン系イベントでも強まるのかと思うとうんざりする。別に、恋愛とか結婚は、したくなればすればいいけど、絶対しなきゃいけないことみたいな空気は絶対おかしい。
そもそも結婚は恋愛のゴールみたいな価値観って個人の価値観だし、法律で書いてあることじゃないのに当たり前みたいに言われてるのはおかしいと思う。結婚したら子どもを産むもの、みたいなのもそう。同性婚同性婚っていうんじゃなくって、そういう変な価値観の押しつけを見直すことも一緒に考えなきゃいけないけど、LGBT運動は「愛がー」「結婚の権利がー」みたいなことしか言わないし、同性婚のことをLGBTウェディング(笑)とか呼んでたりするし、もう最近の同性婚ブームにはうんざり。同性婚のことしか考えられないならLGBTとか名乗らないでください!
…まぁ最後の「名乗らないで」と言うのは完全にはうなずけないところでもありますが、言いたくなるのも気持ちとしては分からなくもないです。
「異性愛者」でなくても「結婚」から逃れられないのか?
恋愛と結婚はセットなのか? 恋愛したら結婚しなければいけないのか? 恋愛できないと人間として失格なのか?
いやそもそも「恋愛」という言葉自体、かなり曖昧な表現で、留保無しに用いるのは危険な言葉なのではないか?というのが、今回のテーマです。
パッケージングされた「恋愛結婚イデオロギー」、「定食」推奨文化
さて、まずご紹介したい用語が「恋愛結婚イデオロギー(ロマンティック・ラブ・イデオロギー / romantic love ideology)」です。
字面で「(*^_^*)素敵!」と思った方と「(;´Д`)ウエップ」ってなった方、それぞれいらっしゃるかと思いますが、どういう意味の用語かについては以下のリンクに詳しいですので、ご参照ください。
- ジェンダーとセクシュアリティ 2.恋愛結婚イデオロギー・再生産(生殖)イデオロギー (信州大学のサイトのようです)
さて、この「恋愛結婚イデオロギー」、この社会に広く定着している(と諸葛が考える)「定食」文化・「らしさ」文化の一形態と考えますが、なかなか強烈な抑圧となっているわけです。
次に、「恋愛」という言葉から想起されがちなこと、「恋愛」と関連付けられやすいことについてリストアップしてみました。ちょっと多いですよ。
「恋愛定食」の中身 ──恋愛と関連付けられやすい項目──
- 好き(相手を好ましいと思う気持ち)
- ドキドキする気持ち
- 対面時のドキドキ
- 対面していない時のドキドキ
- 相手(電話、チャット等)をしている時のドキドキ
- 相手をしていない時のドキドキ
- 相手を一人の人間であるとする認識
- 相手を特別な存在であるとする認識
- 対面している相手を特別な人であるとする認識
- 対面していない相手を特別な人であるとする認識
- 相手(電話、チャット等)をしている時に相手を特別な人であるとする認識
- 相手をしていない時に対象を特別な人であるとする認識
- 特別な人であるから許せる/許せないと思う行為など
- 相手を特別な存在であるとする認識
- 嫉妬
- 一般的な嫉妬
- 特別な相手に対する嫉妬
- 所有欲・独占欲
- 相手を独占したいと欲する気持ち
- 相手をしている時/していない時
- お互いに独占し合うことを欲する気持ち
- 相手をしている時/していない時
- 相手を独占したいと欲する気持ち
- 承認欲求
- 特定の相手に認められたいと思う気持ち
- 広く場のメンバーに認められたいと思う気持ち
- やっかみ
- ドキドキする気持ち
- 性欲(ムラムラする気持ち)
- ムラムラを解消したいと思う気持ち
- ムラムラを他人と関わることで解消したいと思う気持ち
- ムラムラを特定の相手と関わることで解消したいと思う気持ち
- ムラムラを他人と関わることで解消したいと思う気持ち
- ムラムラを解消したいと思う気持ち
- 相手との身体的接触(スキンシップ)を欲する気持ち
- 相手とより密接な身体的接触を欲する気持ち
- 相手とキスをしたい気持ち
- 部位あれこれ
- 相手と性器の接触を伴う身体的接触を欲する気持ち
- 相手の性器などに触れたい気持ち
- 相手に自分の性器などに触れられたい気持ち
- 相手の性器と自分の性器を結合したい気持ち
- 相手とキスをしたい気持ち
- 相手とより密接な身体的接触を欲する気持ち
- 相手との関係性を欲する気持ち
- 「付き合う」、約束
- 期限を伴う約束・期限を伴わない約束
- 「気持ちが離れたときまで」という期限
- 一方か、双方か
- 「死が二人を分かつまで」という期限
- 無期限の「永遠」
- 「気持ちが離れたときまで」という期限
- 貞操(「浮気」をしないこと)の約束
- 契約外の相手と時間を共にすることをNGとする約束
- どの程度からNGとするか?
- 連絡先交換は?
- 仕事相手は?
- どの程度からNGとするか?
- 契約外の相手と身体的接触をNGとする約束
- どの程度からNGとするか?
- 契約外の相手に特別な感情を抱くことをNGとする約束
- どの程度からNGとするか?
- 契約外の相手と時間を共にすることをNGとする約束
- 関係を継続するという約束
- 未来において相手をする(対面する、再会する、連絡を取り合う、など)という約束
- 専属契約
- 一対一の専属契約(モノアモリー)
- 一対一に限定されない専属契約(ポリアモリー)
- 契約はしないが特別な間柄でいたい気持ち
- 専属契約を結ばないライフスタイル(ノナモリー)
- 「友達以上恋人未満」
- 「腐れ縁」
- 「浮気」
- 「割り切った関係」
- 期限を伴う約束・期限を伴わない約束
- 「付き合う」、約束
- 結婚
- 「恋愛結婚」
- 「お見合い結婚」
- 「許嫁」
- 配偶者の介護
- 配偶者の親の介護
- 再生産(出産など)
- 「自分たちの血を引く子」を欲する気持ち
- 養子縁組
- 年少者の世話を焼くことに対する欲求
- 文化的再生産欲求
「恋愛ビュッフェ」という提案、食べないという選択肢
さて、上記の中であなたに当てはまる項目はどのくらいありましたか?
結果に関しては恐らく、個人差が大きく出るのではないでしょうか。誰かアンケート調査してほしいくらいです。
ただ、個人の感覚やその集合としての社会的風潮として「こうあるべき」という考え方があると思います。
「こうあるべき」が広く共有されていると認識する社会においては、しばしば「恋愛」は食堂における「定食」のように、決められたものを受け入れる(食事で言うなら「食べる」)ことが求められます。
しかし、それぞれの項目が「定食」になっていることで、実は少なからぬ人々が「食べたくないものを食べさせられている」としたら、その「定食」の構成が人々を幸せから遠ざけていると考えられます。「正しい恋愛」というのは先に挙げたようにイデオロギーなのですから。
そこで諸葛が提唱するのは「恋愛ビュッフェ」です(「ビュッフェ」にするか「バイキング」にするか、微妙に悩みましたw)。
自分で好きなように「料理」を組み合わせて、食べたいものを食べたいだけ食べて、食べたくないものは食べない、それでいいじゃないか、ということです。
ここで考えるのはあくまで自分達(特別な関係を結びたい相手がいればその人)がどうすれば満たされるか、どうすれば幸せに近づけるかです。そして、食べたくない人に対して押しつけてはいけないということです。
もちろん「恋愛定食」を気に入っている人もいるでしょうから、それを廃止しろとは申し上げません。
ただ、「恋愛定食」が唯一の選択肢ではないと、主張致します。
恋愛などの人間関係で疲れた時の為に、「恋愛ビュッフェ」という概念を、アタマの隅っこにでもいいので、置いておいてくだされば幸いです。